慣性核融合


代表的な核融合反応に次のようなものがある。
D + T 4He + n (17.59 MeV)
D + D { T + H (4.03 MeV)
3He + n (3.27 MeV)
D + 3He 4He + H (18.34 MeV)
これらの中で DT による反応が20 keV程度の温度で反応速度係数が
<σv> ≈ 4×10-16 [cm3/s]
と大きくなるため、実用的な核融合炉は DT 反応を考えている。

磁場閉じ込め核融合は定常的にプラズマを保持し、燃料とエネルギーを供給しながら反応を継続する。 これに対し、慣性核融合は瞬間的に高エネルギー密度状態を作って反応を起こしてしまう。 反応の発生率は

dn/dt = NDT<σv>
ここでNDとNTはそれぞれDとTの粒子数であり、全粒子数をNTとすると
D = NT = N0/2 - n
の関係がある。 燃焼率を
φ = 2n/N0
と定義すると
φ = N0τ/(N0τ + 2/<σv>)
の関係がある。 ここでτは反応の持続時間であり、プラズマの半径をr、音速をcsとすると
τ ≈ r/3cs
の関係がある。 質量密度ρを用いると
φ = ρr/(ρr + 6)
と求められる。

慣性核融合の重要な点は反応生成物であるα粒子がプラズマから逃げ出すことができず、そのまま加熱に使われることである。 加熱に必要なエネルギーEHに対し、α粒子のエネルギーEα

α > EH
となるとき点火が起こる。 このとき、φ > 2.4 [%]、ρr > 0.14 が条件である。

慣性核融合のシナリオではM = 1×10-2 [g]の燃料を用い、ρ = 100 [g/cm3]およびr = 0.03 [cm]を達成することにより、出力エネルギーの合計1×109 [J]が得られる。


課題

  • 1 molの D と T がすべて核融合反応を起こしたとする。
    • DT 反応で発生するエネルギーを J で表しなさい。
    • 1 gのTNT火薬の発生する熱エネルギーは 1.1 kcalである。 この DT 反応で発生するエネルギーをTNT火薬の量で表しなさい。
  • 地震のエネルギーE[J]とマグニチュードMとは
    log10E = 4.8 + 1.5M
    の関係がある。
    • 東日本大震災のエネルギーはM = 9.0であった。 このエネルギーを J で求めなさい。
    • このエネルギーをTNT火薬の量で表しなさい。
  • 1 GJのエネルギーを身近なもので表したい。
    • 100 Wの電灯をどのくらいの時間点灯することができるか。
    • 質量が1000 tの列車の場合どのくらいの速度になるか。
    • 隕石は第2宇宙速度で地球に到達する。 どのくらいの質量の隕石に相当するか。
  • 核融合積ρrと燃焼率φとの関係を計算しなさい。
ρr [g/cm2] φ
1
2
3
6
12
18

Email: Keiichi Takasugi