半導体リソグラフィと軟X線顕微鏡


レンズによる結像の分解能について考える。 レンズの収差は無視する。

距離δだけ離れた二重スリットを通った光の1次回折光が強め合う条件は

δsinθ = λ
である。 ここでλは光の波長、θは散乱光の角度である。 屈折率nの媒質中においては真空中の波長をλ0とすると
δ = λ0/nsinθ
となる。

スリットを通った光がレンズを通る場合を考える。 レンズの最大見込み角をθ0とすると

δ = λ0/nsinθ0
はそのまま分解能を与える式となる。(Abbe の式) ここでnsinθ0を開口数(Numerical Aperture)という。

ピンホールを通りレンズで集光された光は広がりをもった円形の像となる。 距離δ0離れた2点を通った光の像が判別できなくなる限界はRayleighの定義によると

δ0 = 0.61λ0/nsinθ0
となる。

一般に原子番号の大きな原子はX線の吸収係数が大きいが、内殻電子の電離にともなう吸収端があって部分的に吸収係数の逆転が起こる。 CとOのそれぞれのK吸収端の間の領域はCの吸収係数がOよりも大きい。 この領域の軟X線に対しては水中の有機物がきわだって見えるため、生体組織を生きた状態で観測することができる。 この領域は「水の窓(Water Window)」とよばれている。

可視光を用いた光学顕微鏡の分解能は200 nm程度に制限されている。 「水の窓」領域の軟X線を用いることにより、分解能を飛躍的に高めることができる。


課題

  • Rayleighの式により、n = 1 における各光源の分解能を求めなさい。 sinθ0 = 0.9とする。
光源 λ0 [nm] δ0 [nm]
KrF 248
ArF 193
EUV 13.5
  • ArFレーザーを用いた場合、水(n = 1.44 @ 193 nm)中での分解能を求めなさい。
  • K吸収端は内殻の電離エネルギーに対応している。 このエネルギーから波長を計算しなさい。
元素 エネルギー [eV] 波長 [nm]
C 284.2
N 409.9
O 543.1

Email: Keiichi Takasugi