Paschen の法則


粒子間の衝突を扱う。 標的となる原子または分子の大きさを断面積σ [m2] で表わす。 標的の密度をN [m-3] とする。 このとき、平均自由行程は
λ ≡ 1/Nσ
で与えられ、衝突から衝突までの平均距離を表す。 気体の量は密度Nを用いるよりも圧力pを用いるほうが便利なので、
Nσ ≡ Ap
のようにAを定義する。

放電の開始に関する Townsend の理論を紹介しよう。 平行平板電極に電圧を加えて放電を行なう。 電子は中性原子と衝突して散乱される。 電場をEとすると、距離xを動く間に獲得するエネルギーはExであり、このエネルギーが気体の電離エネルギーUを越えると電離が起きるようになる。 このような電子の数は

n = n0- U/λE
であるので、単位長さあたりに電子が増倍される割合は
α ≡ e- U/λE/λ = Ap e- AUp/E
これを Townsend の第1係数という。 電子の数は
n = n0αx
のように指数関数的に増大する。(なだれ現象)

電極の間隔をdとする。 はじめ密度n0でカソードを出発した電子がアノードに到達したとき

n = n0αd
であるので、密度の増加分は
0(eαd - 1)
これが生成されたイオンの数でもある。 これが逆にカソードに進み、カソードから二次電子をたたきだす。 二次電子放出率γを Townsend の第2係数という。
γ(eαd - 1) = 1
のとき、正のフィードバックにより電子の数は無制限に増大する。 これから
αd = ln (1/γ + 1)
となる。 先のαの式を代入し、V = Edとおくと
V = AUpd/ln (Apd/ln (1/γ + 1)) = Bx/ln Cx
ただし、x = pdとおいた。 これを Paschen の法則という。 これが極小値をとるときのpdを求めてみると
x = e ln (1/γ + 1)/A
となり、放電の起きやすい圧力がわかる。 このとき放電電圧は
V = AUpd
となる。

参考書

  • 武田進:「気体放電の基礎」、東明社
  • 八田吉典:「気体放電」、近代科学社

課題

  • Paschen の法則をグラフに描きなさい。
  • Paschen ミニマムの条件を具体的に求めてみよう。
    • 2ガス中での電子の実効的な散乱の断面積をσ = 1.0×10-19 [m2]とする。 上で出てきたAの値を温度T = 300 [K] として求めなさい。
    • 1気圧のN2ガス中での電子の平均自由行程を求めなさい。
    • γ = 0.01 としたとき、放電が起きる条件でのpdの値を求めなさい。 また、d = 0.1 [m] のとき、pはいくらか。
    • このときのαはいくらか。 また、カソードを出発した電子がアノードに到達したときに何倍になるか。
    • このときの放電電圧Vを求めなさい。ただし、N2分子の電離ポテンシャルは 15.5 V である。

Email: Keiichi Takasugi