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重イオンビームプローブ

イオンビームをプラズマ中に入射すると、ビームのエネルギーは電位の影響を受ける。 運動エネルギー$ W_0$ の1価のイオンが電位$ \phi$ のところにやってくると運動エネルギーは

$\displaystyle W = W_0 - e\phi(x)
$

となる。このイオンがここで2価に電離し、$ \phi = 0$ のところに戻ってくると$ 2e\phi$ のエネルギーを得るため、差し引き運動エネルギーは

$\displaystyle W = W_0 + e\phi(x)
\begin{picture}(0,0)
\put(20,-10){\includegraphics[width=6cm,clip]{potential.eps}}
\end{picture}
$

すなわち電離した位置の電位情報を持って飛び出してくる。このエネルギー変化を精密に測定することによってプラズマ中の電位を位置の関数として知ることができる。

イオンソースとしては、アルミノシリケート(沸石)のNaイオンをK、Rb、Csなど他のアルカリ金属に置換したものがよく用いられる。 アルカリ金属は電離ポテンシャルが小さく、加熱するだけで簡単にイオンを取り出すことができる。

\includegraphics[width=1.8cm,clip]{ionsource.eps} \includegraphics[width=5cm,clip]{analyzer.eps}

静電エネルギーアナライザは並行平板型がよく用いられる。 平板内の電場を$ E$ 、ビームの速度を$ v$ 、入射角を$ \theta$ とすると、平板内の移動距離は

$\displaystyle x$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac{mv^2}{eE} \sin 2\theta$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac{2W}{eE} \sin 2\theta$  

ここで$ W$ はビームエネルギーである。

\includegraphics[width=10cm,clip]{hibp.eps}

イオンソースを出たビームは磁場中でLorentz力を受け軌道が曲げられる。 プラズマ中を通過する際に電子との衝突で電離を受けると、さらに軌道半径が小さくなって大きく曲げられる。 エネルギーアナライザはプラズマ中のある限られた領域で二次電離を受けたイオンを見ていることになる。 アナライザを通過したイオンは2枚のイオンコレクタで電流として検出される。 電流は差動アンプを通して負のフィードバックをかけることにより、ちょうど2枚のコレクタに等しい電流を受けるよう、アナライザの電圧が制御される。 この電圧はイオンのエネルギーに比例しており、この電圧とイオンソースの加速電圧を比較することにより、ビームのエネルギー変化、すなわちプラズマ中の空間電位$ \phi$ を測定することができる。

1価に電離した荷電粒子ビームの電流はビーム密度$ n_b$ 、ビーム速度$ v_b$ のとき

$\displaystyle I_p = en_bv_b
$

である。 これがプラズマを通過する際に電子衝突によって2価に電離したとする。 電子密度$ n_e$ 、電離速度係数を $ \left<\sigma v\right>_{ion}$ 、サンプル長を$ \ell_s$ とすると2価のビームの電流は

$\displaystyle I_s = 2en_bn_e\left<\sigma v\right>_{ion}\ell_s
$

となる。強度比をとると

$\displaystyle \frac {I_s}{I_p} = \frac {2n_e\left<\sigma v\right>_{ion}\ell_s}{v_b}
$

これはビーム密度によらず、電子温度と電子密度の関数になっている。



Keiichi Takasugi
平成25年9月18日