加速器科学 (田中俊成、早川恭史、境 武志、住友 洋介)
研究拠点:理工学部船橋校舎電子線利用研究施設(LEBRA)
田中
 
早川
 
 
住友
 
   加速器グループは電子線利用研究施設(LEBRA)において、125MeV 電子線形加速器(リニアック)を基盤としたさまざな研究開発に取り組んでいます。主要研究テーマとして自由電子レーザー(FEL)による赤外から可視領域の光源開発とパラメトリックX 線放射(PXR)を利用したX 線源開発を行っており、これらを基盤とした物質、生命、資源科学の広い学問分野を研究対象とする先端的な研究拠点が形成されています。

 LEBRA はユーザー利用実験の設備を整えた国内有数のFEL 施設として、共振器型連続波長可変FEL では世界的にも短い波長領域である1μmから6μmの近赤外FEL を供給しています。また、PXR による連続波長可変X 線源実用化という世界で初の試みに成功し、波長選択性と単色性を備えた5〜20keV のコヒーレントなX 線が得られています。これを用いて、従来では大型放射光施設以外では実施が困難であったX 線吸収端微細構造(XAFS)分析や回折強調型位相コントラストイメージング(DEI)などの応用が開拓されつつあります。

 LEBRA は大学付置の中規模施設ながら赤外からX 線領域にわたる波長可変単色光源を実現しており、国内のみならず世界的にもユニークな存在となっています。実際にさまざまな分野の応用研究へ赤外光やX 線を供給しており、理工系だけでなく医学・歯学などの生命科学分野の研究者や学生の研究にも利用されています。このように学際的な研究者の交流の場ともなっており、多岐にわたる研究が可能となっています。

 また、加速器の高性能化に関する研究も重要なテーマであり、光源・線源の高度化にとっても不可欠なものです。そのため、 クライストロンなどの高周波装置や非破壊型ビームモニターといった加速器にとって重要な装置の改良や開発、あるいは制御システムやデータベースの構築、それに伴うソフトウェアの開発などを精力的に進めています。加速器には放射線源という側面もありますから、放射線検出器・モニタリングシステムの開発といったことも研究テーマにすることができます。また実験的な研究に加え、ビーム加速原理やFEL、PXR に関する理論的な研究やシミュレーションコード開発といったことも重要なテーマとなっています。光源・線源の開発を含めた加速器の高度化は、大学共同利用機関高エネルギー加速器研究機構(KEK)との共同研究を基盤として進められています。

 メイン加速器と独立したテーマとして、電子ビーム冷却技術として提唱されているサイクロトロンメーザークーリング(CMC)の研究が挙げられます。現在、(財)科学技術振興事業団より引き継いだ原理実証用マシンの立ち上げを行っていますが、CMC が実証されれば世界初のことであり、ビーム冷却技術に大きな飛躍をもたらす可能性があります。

主な研究テーマ
○ 高性能電子加速器の研究開発
○ 自由電子レーザー(FEL)の研究(実験・シミュレーション)
○ パラメトリックX 線放射(PXR)によるX 線源開発研究
○ サイクロトロンメーザークーリングの基礎研究
○ 各種光源・線源の高度利用に関する研究
○ ビームモニター・加速器制御システムの研究開発
○ FEL 高調波生成に関する研究
○ コヒーレントX 線の応用に関する研究
○ 放射線測定システムの開発研究


 
電子線利用研究施設

加速器コントロール室

CMC 原理実証用実験装置

125MeV電子線形加速器

電子ビームライン